227人が本棚に入れています
本棚に追加
男の手が、まだ人間としての形を保った左手が、少女に伸びる。それからなんとか逃れようとするが、しかし最早身体の行き場所はない。
「もう君は…僕の物だ…」
うひひ、と声を押し殺すこともなく男は笑う。怯える少女を嘲笑うかのように。
目の前の男を直視していたくなくて、直視出来なくて。少女は固く目を瞑った。
しかし、いつまで待っても触れられた感がない。
時間にすればほんの数秒なのかも知れないが、少女にとっては数分間もそのまま待たされたような感覚。
不自然さにうっすら瞳を開くと、目の前の男は少女ではなく、彼女の上を見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!