序章:月は総てを照らす

6/10
前へ
/57ページ
次へ
    男の表情が、愉悦から憤怒に変わる。 「何だお前は!」 自分の行為を咎められた訳ではないがしかし、男は怒声を放った。それは視線の先の人物が、これから行うであろう事を邪魔すると予見して。それを追い払おうとして。 誰かが、居る。 それに気付いた少女は、身を翻して頭上を見遣る。 そこに居たのは、闇に溶けるような真っ黒な外套を着た、黒髪の男。少女と男を見下ろす双眸は、酷く無機質。 その暗黒のような装いに、少女は息を飲んだ。 怖い。 そう感じて。  
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

227人が本棚に入れています
本棚に追加