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真面目?
王の御前だ。これぐらい当然だろう。
「あまりからかわないでやってくれよ、久渚」
火燐が苦笑して続ける。
「フェイも、楽にしてくれ。でないとこの先続かないぞ」
兵士や部下がいなくなって気を緩めたのだろう。
火燐は先ほどよりずっと明るくなっている。
「紹介しよう、フェイ」
火燐は男の元に歩み寄ると、彼の肩に手を掛け青年――フェイに向かって言った。
「彼は久渚。月の国の大賢者だ」
紹介をうけて、久渚はフェイに向かって手を差し出した。
「久渚です。よろしくアルタス団長、いや、フェイでいいかな?」
久渚は無理矢理にフェイの手を両手で掴んで軽く上下に振った。
そして徐に彼の手を調べるように繁々と眺めた。
「どうだ久渚?なかなかいいだろう」
火燐が久渚の肩越しにフェイの手と久渚の顔を交互に見る。
「そうですね、筋肉の付きもいいですし、背丈もあります。実戦としてももちろん使えるんでしょ?」
最後の方を茶目っ気たっぷりに言うと、久渚はようやくフェイの手を放した。
「当たり前だ。何せ騎士団長だからな」
火燐は胸を張り、何故か誇らしげだった。
彼が誇る意味がまったくわからなかった。
騎士団長である自分を連れてきて、一体何のお披露目なのだろうか。
まさか他国のお偉方に見せる為だけに呼ばれた訳ではあるまい。
「ですよねぇ、しかも歴史上では最年少昇格だそうで。噂は兼々聞いてますよ。前団長の方に勝負を挑まれ返り討ちにしたとか、闇討ちして団長の座を奪ったとか、実は彼は親の仇で、殺すつもりだった、等々」
まるで笑い話でもするかのように久渚が言う。
実際、久渚は笑いながら話していた。
「全部大嘘ですっ!」
もっとも、フェイにとっては笑えない冗談だが。
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