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薄暗い部屋は静けさを取り戻した。
傷一つ無い、汚れてさえいないシンプルな柩を見下ろして男は先端の光るステッキをクルクルと回した。
「思ったより長かったですね」
やがてシンプルな柩が色を変えていく。
黒一色のシンプルだった柩は徐々に徐々に薄い茶色に変わっていく。
何やら木造そのものに見える柩に変わった柩にはトンカチやら鉋やらの絵が書き込まれている。
ギィ---ッ
やがて開いた柩から出て来た人物はハッピを着込みトンカチと釘を手にした男性だった。
彼は虚ろな目で棺桶を離れると真っ直ぐに扉へと向かっていく。
男はそんな男性に深々と頭を下げた。
「逝ってらっしゃいませ」
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