柩-HITUGI-

13/15
前へ
/47ページ
次へ
扉から出て行った男を見送った後、男は扉の横の椅子に腰掛ける。 薄暗い部屋の中無造作に置かれた柩の数は数えたくもないほどに多い。   これが全て「自殺」によって死んだ者の柩かと思えばあまりに多い。   自殺死亡者一人一人の精神が完全に崩壊し、新しい誰かとなってこの部屋を出て「お還りになる」のを見送るのが男の仕事だ。   自殺死亡者に明るい来世など有り得ない。生まれ変わった彼等もまた、酷い道しか無いのだから…   故に男は生まれ変わった彼等に敬意を示して送り出しの言葉をかけるのだ。     「逝ってらっしゃいませ」と…          柩-HITUGI-
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加