9人が本棚に入れています
本棚に追加
外に出ると晴天だった。
門の前に彼女のバイクが止まっていた。赤だった気がする。変わった形のバイクで何故か前に腰掛ける部分がついていた。
彼女は私に拳銃を持たせるとその前の座る部分に後ろ向き、つまり彼女の方へ向くように座らせた。
そして彼女はバイクに跨ると私に向かって
「私の頭に突き付けるようにして持ってなさい」
と言った。
凛としたというよりは、姉貴っ!と言いたくなるような声だった気がする。
私は言われた通りにした。
彼女は私の命令で殺されないように仕方なくバイクを運転する被害者というような状況を作り出したのだと思う。
事実、走ってきた警官等は焦ったようにしていたし、何やら無線で連絡を取るものの直接こちらには何も手を出してこなかった。
彼女のバイクは走り出した。
彼女はヘルメットさえ着けていない。それは私も同じだったが彼女の長い髪が靡くのを綺麗だと思った。
正直、バイクの前の部分に後ろ向きで座っているのは怖かった。いつ事故になってもおかしくない。
彼女も真剣だったのだろう、曲がり角で口を開き
「お願いだから絶対動かないで」
と言った。
私はここまで一切言葉を発さなかった気がする。
最初のコメントを投稿しよう!