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この時私は何故、バイクの前部に後ろ向きで乗る必要があるのか全く分からなかった。
後部に乗せても構わないだろうと。
これには夢から覚めて少し時間が経ってからふと気付いた。
後ろから警官に撃たれないためだったのだ。
彼女を完全に盾として私を撃たせないようにするためだったのだと。
自分の夢の行動に後から頭を悩ませるなんて不思議な感覚だった。
ともあれ。
彼女のバイクは道路を走り続けた。
覚えているのは走っていたのが左車線だった事、意外と広い道路だった事、自分から見て右側つまり左側に川か何か、とにかく水が流れていた事。
やがて彼女のバイクはゆっくりと止まった。
「いい?暫くそこに見える建物で隠れてなさい」
私を下ろした彼女の指差す方には建物というには明らかに隠れられない廃屋のようなものがあった。
上を見れば歩道橋が渡してあった。
「駄目だよ」
この時私は初めて口を開いた。
「まだ建物が見える。奴等が見ている」
私の言葉に彼女は来た方を振り返った。
私達が出てきた建物はまだそう離れていない位置にあり、双眼鏡をもった警官の姿が何故だかはっきりと見えた。
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