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四月。入学式。桜咲き、全てが輝いて見え、また、今まで一度、見た事のあるはずの風景が、新しいものに見える――
そんな素晴らしい時を感じていたのは、丁度一年前の話だ。
今のオレといえば、いつも通り退屈な授業を受けている、平凡な学生である。
窓の外を眺めて見ると、出来たてほやほやの新入生たちが、本当に目を輝かせながら、少し興奮した面持ちで、入学式の会場である体育館へと向かっている。
以前の映像をまた見るようで、なんとなく視線を窓からそらした。
…過去の自分の姿は恥ずかしいものだ。
そんな感傷にひたっている内に、数学担当の杉内が、新しい公式を書き終えてしまった。
こんな見ても読んでも意味のわからないような呪文を書き写して、何になるのか。
そうやって、怠惰な自分の性分から逃れようとしていると――
チャイムが、鳴った。
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