特別編―南陽祭二日目

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「バ……バンドっ?!」  女装から一転してゴシック系の衣装に身を包む梓に美羽は目を丸くした。 「うん、美羽の想像してる通りのバンドな」  野外の特設ステージの舞台裏では慌ただしく人が動き回る。梓は欠伸をしながら普通に言って退けた。 「だってね、予定してた人達が渋滞に嵌まってみーんな来れないからバンドも、ダンスも……、困るよねぇ、本当に」 「仕方ないですよ……、どうにもならない事を嘆いたって状況は悪化するばかりですから」  俊宏は膨れっ面でいたが敬は至って冷静である。  今からリハーサル無しのぶっつけ本番でボーカル、ギター、ドラムを合わせようとしている無謀な3人に美羽は目を疑った。 「ねぇ、開演を延長したりはしないの?」 「既に5分も遅れてんだぞ? 待てるかよ」  やる気満々ではなさそうな梓はプランのズレに苛々しているようだ。 「でもっ、いくら何でもこれは無茶だよっ!」  美羽以外の準備スタッフも口には出さないが心ではチャレンジャーだ、と思っている。  幕を上げる掛かりの生徒もボタンを押すのが正しいのかが分からなくなっていた。 「無茶……ね」  美羽の台詞に俊宏は愛用のギターの弦の最終調整をしながら心底可笑しそうに笑った。  ドラムの前に腰を下ろした敬も俊宏と同じくだ。  最後に梓がいつものように締め括る。 「俺達に出来ない事はねーぜ、美羽? I'ts show time」  大量の火薬の爆発音と幕が上がるのは殆ど変わらなかった。
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