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「美羽?」
急に立ち止まった自分に三人は振り返る。
美羽は手元に出した包みを突き出した。
「……爆弾か?」
「本気で吹き飛ばすわよっ」
梓には“デリカシー”と言う言葉が足りない。
財閥の息子の割りには発言の大部分がおかしかった。
彼女が可愛らしい包みを彼氏に差し出しているのだからその所は察して欲しい物だ。
「お菓子よ、疲れてるかなぁ……と思って作ったの」
やっぱり疲れた時には甘い物……という安易な発想がチョコチップクッキーを生んだ。
「お前が……暗殺か?」
「殺すわよっ」
彼氏へのプレゼントに毒物を捩込む女が居る物か。
どれだけ自分を信用してないんだ、この男は。
「梓……、少なくともあんたよりは料理は上手いと思うわよ? 文句は食べてから言って頂戴」
とりあえず、美羽は三人にそれぞれ包みを渡した。
「ありがとうございます」
「ありがとー、美羽ちゃんっ」
人を笑顔にすると自分も笑顔になる。胸にポカポカとした日だまりが浮かんだ。
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