特別編―南陽祭二日目

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 それから間もなくしてとてつもなく派手な女性が現れた。  《逆らう可からず》の雰囲気が全身から滲み出ている。 「……俊宏は?」  顧問の彼は女性に睨まれて子羊のように縮こまる。  美羽は彼を見ていて段々と不憫になった……。 「あ……あっち……です」 「そう」  火の付かない煙草を指に挟む彼女は梓に負けない目力があった。 「あっ―――すかさぁーんっ!」  それも俊宏に対面した瞬間に雪が溶けるように綻(ほころ)んだ。 「全く……、私をこんな風にするのはあんたくらいよ……? 次、呼びだしたりしたら……アフリカに飛ばす」 「いやぁー! ごめんね、飛鳥さん」 「謝って済むなら警察は要らないわよ? 地獄へ落ちるか、干からびるか、選ばせてあげるだけでも有り難く思いなさい」  性格も梓に負けず劣らず、良い感じに横暴だ。  否、横暴さだけならば俺様を上回るだろう。
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