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「馬っ鹿……。恥ずかしいことしやがって……」
梓は未だに赤みの引かない耳に八つ当たりをした。
敬の眠る顔を見るのは随分と久しぶりで、意味もなく恥ずかしくなる。
悪いことをしているつもりはなかったが変な感じがした。
「ぅ……ん……?」
「け、敬。大丈夫か?」
「……ここは……保健室……?」
「ああ……」
「……体育祭っ!」
理解の早い敬は無理矢理体を起こそうとして目眩を起こす。
梓は前とは逆の立場になり敬の胸を思い切りベットへ押した。
「テメーは休め。慣れないことをして疲れてんのは分かってんだ」
「し、しかし……」
「……お前なんか居なくても体育祭は出来んだよ」
梓の一言に頭を殴られたほどの衝撃を受けた。耳を塞ぎたくなる。
梓に言われることが何よりも辛い言葉だった。
必要じゃない、とストレートに言われる方が幾分かマシだ。
喉を詰まらせた敬にゴソゴソとしていた梓はピタリと動きを止めた。
真上に覆い被さる形に梓の顔が敬を覗き込み、まるで復讐のように顎に手を宛てらる。
「体育祭はな、お前なんか居なくたって出来る、けどな、生徒会にはお前が居なくちゃ困るんだ。だから、早くその風邪治せよ、馬鹿……」
サラッ、とした赤茶の髪と黒髪が混じり合った。
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