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梓の行動に敬の心臓は一瞬、本気で拍動を止めた。
ゴクリと喉を鳴らすまで梓は敬から離れなかった。
敬が薬と水を完全に喉を通すまで梓は長い睫毛を伏せていた。
薬が無くなったことを確認し、漸く二人の間に距離が生まれる。
潤う唇はつい数瞬前まで繋がっていたことを証明していた。
言葉を奪われた敬はただ、固まるしか残されていない。
梓はクスリとして敬の上から身を引いた。
「仕返し」
梓はベットサイドで振り返る時、肩を上げてベッ、と舌を突き出した。
敬は現実を突き付けられ、彼にしては珍しく動揺を露にした。
「あ…………貴方はっ……!」
「別に良いじゃん。親友の特権」
「だ、だからってっ!」
「好きだぜ……、敬……」
「…………」
「出来れば……、ずっと親友で居たいんだ……」
「…………何を。親友以外の何になるって云うんです?」
「そう……だな。悪い、独り言。また、迎えに来るから」
保健室の扉が何かを区切ってしまったかのように大きな音を立てて閉まった……。
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