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「梓にしては良く出来ました」
その顔を見ると梓は妙に抱き着きたくなる。
今、切ない気持ちに支配されているので彼女の存在は大きい。
「……美羽……」
「梓は優しいね……。見てないようで皆のこと、ちゃんと見てる」
「ちげぇよ……。臆病なんだ……」
何も出来ないのが分かっていても手放せないのは―――好き、だから……。
想う気持ちの種類は違えども好きに変わりはないのだ。
「体育祭に……戻ろうか?」
「……いや……、もう少し……このままで……」
「そっか……。うん、もう少しこのままで居ようか……」
蒸し暑いけれど美羽は縋る手を無理矢理に振り払うことが酷に思われた。
人が人を想う時、上手く行くのはほんの一握りだ。
梓を抱きしめながら美羽はこんな哀しい問いを思い浮かべた。
10年越しの想いに一目惚れは勝てるのだろうか……?
完
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