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「―――ふっざけんじゃないわよ! あんた何様のつもり?!」
美羽の叫びに梓は平然と優雅さを兼ねてしれっ、と言ってのけた。
「俺様」
流石の美羽も耐え切れずに梓の前に行き腕を振り上げる。
次の瞬間には良い音が生徒会室に響き渡った。
ただ、平手打ちが当たった相手は梓ではなく―――敬だったのである。敬が梓をかばったのだ。
「―っ、あの……っ、ご、ごめんなさい……」
美羽はとにかく、謝った。ワザとで無いとは言え、無実、無害の人を殴ってしまった。
「……いいえ。大丈夫ですよ。それよりも、貴女は少し冷静になって下さい。生徒会長なんか殴ったら、転校初日で退学になる所でしたよ?」
静かに諭す敬の言葉を美羽は素直に聞き入れた。
「はい……。反省し……て……」
しかし、大丈夫と言った敬の顔を見ると口から血がポタポタ流れていた。
「敬……血が………、血が……出てる。血……が……」
「ああ、少し口の中を切っただけですよ。」
ポケットからハンカチを取り出した敬はその血を煩わしそうに拭う。
しかし、美羽はそれどころでは無かった。
「あ……。嫌……。い…やぁ………っ!」
頭を抱えた美羽はその場に崩れ落ちる。
「美羽君っ?」
幸いにも敬がキャッチしてくれたので大事には至らなかった。
美羽は母親が事故に遭ったのを目の前で見て以来、血を見ると大方、気絶してしまうのだ。トラウマなのである。
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