『恋に堕ちたあなたへ…』

－はじまり－

　あたしはそれから、手当たり次第に恋する相手を変えていった。
『所詮ﾘｱﾙじゃないんだから…』
　ちょっとでもしつこかったり、放置されると、ﾒｰﾙｱﾄﾞﾚｽを変え、HNを変えた。　慣れてくると、危険を承知で近くに住んでいる人と会ってみたいと思うようになった。

　初めてﾁｬｯﾄで意気投合した男の子と会う事を決めた時は、その日が近付くにつれ、逃げ出したい気持ちになった。
　あたしは実年齢を10歳もごまかしてたから…
　でも、幸い童顔のあたしは、すんなり受け止めてもらえた。

　初めて夫を裏切った時は、なんて事をしてしまったんだろう。と後悔したけど、相変わらずあたしには無関心で、不景気のせいか、仕事面でもやる気のない夫には愛想が尽きていた。
　同い年の友達は、まだまだ遊んでる最中なのに、あたしは仕事をしながら、子育てと家事全部。夫は、同僚と飲みに行ったり旅行に行ったりしてるのに、子供が居るから、あたしは何処にも行けない。
　あたしの両親も夫も、母親が飲みに行ったり、旅行に行ったりするのを認めない人種なので、あたしだけが楽しみを我慢して年取っていく気がした。