-はじまり-

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 『お金が足りなかったら、実家に出してもらったらいいじゃない?』 平気で言える夫が信じられなかった。  『お前が働いてくれなかったら、うちは破産だね。』 と笑いながら言う夫…。    バブルが崩壊して、あたしの実家も前ほど余裕が無くなってきている。親も歳を取り、甘える訳にはいかない。  あたしは仕事を探し、クタクタになって帰宅して、片付いてない家事を始める。  一方、夫は自由出勤なので、家でウダウダして、なかなか仕事に行かない。   「お母さん、お母さんの一生こんなんで終わっていいの?」  二人の子供達が食器洗いを手伝いながら言った。今洗っても、後から帰宅した夫がテーブルの上も流し台もグチャグチャに汚したまま寝てしまう。  お風呂もグチャグチャで洗面所もビチャビチャ…電気やガスの電源もつけっぱなしだ。 朝起きてきたあたし達はいつもの事だけど、ビックリする。そして出勤前に、急いで片付けるのだ。 「夕べ寝る時はキレイにしたのにね…」  高校生の娘がため息をつきながら言った。 「お父さん、いらない。仕事だってロクにしないじゃん。」
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