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気が付くと、彼はベッドに寝ていた。
規則正しく並んだ六つのベッド。
洗濯したての真っ白なシーツ。
春風の流れている外の空気も入らない様に遮られた二重の窓。
揺らぐ事のない新品のカーテン。
何か、違和感がある…?
その病室には、彼の他に誰もいなかった。
普通の風邪なら相部屋になっていてもおかしくない。
彼の使っているベッド以外のものは、誰かが使った形跡すらないようでもあった。
それどころではない。廊下を歩いている人もいない程に、院内は静まり返っていた。
足音が一つとして聞こえない中で、彼は、迷子の子どもの様にキョロキョロと辺りを見渡していた。
いつの間にか、あの高熱も下がっていて、彼は安心した。
もう大丈夫だろうと、病室のドアノブを掴んだ。
回らない…。
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