39人が本棚に入れています
本棚に追加
院長の話は続いた。
しかしながら、彼にはそれを聞く余裕などはもはや無かった。
結核?隔離?…俺が?んな馬鹿な。
俺には感染する理由が無い。
…そういえば、バイトで一緒の時間だった相川が風邪っぽかったけど。
まさかその時に?
ふざけんなよ、あの野朗。何で俺が?
何も聞かないうちに、院長の話は終わっていた。
放送が切れた代わりに、今度は煙の様な、粉の様なものが病室に流れて入ってきた。
薬の様なものが挿入された。睡眠薬だ。
彼を連れて行く時に暴れたりする危険性があるからだ。
彼の意識はみるみるうちに失われていく。
俺は、死ぬのか?…いや、さっき収容所に行けとか言ってたから殺しはしないだろう。
つーか、冗談じゃねぇ。
こんな形で死んでたまるかっつーの。
俺にはまだ、やりたい事が…やりたい事…やりたい事って、何だ?
俺は…俺…は――。
彼はそのまま強制的な眠りに就いた。
簡単に目覚める事も無いくらいに、深い眠りに。
最初のコメントを投稿しよう!