春の訪れ ~第一幕~

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 砂利道の中、ゆっくりと揺れ動く車の中に彼はいた。  目には黒いアイマスク、耳には黄色の耳栓、腕には茶色のロープを巻き付けられながら、彼は目覚めた。 擬似暗闇の中で目覚めた。  耳栓の隙間から微かに聞こえてくる声。 『近宮春巳、二十二歳。性別、男。』 『男か。まぁ、いい。 E‐9号室が空いている。 そこに連れて行け。』 『了解。』 どうやら、無線機を使って話しているらしい。
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