春の訪れ ~第一幕~

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 彼の部屋となる場所に着いた。 小さな黒板には日付と誰かの名前が書かれているように見える。 しかしながら、それを読み取ることは不可能に近かった。 「今日からここがお前の部屋だ。 トイレ、シャワー室、洗面所は着いている。 食事は時間になったら係員が運ぶ。 食べ終わった食器は水で濯いで外に出しておく事。 原則として、自分の部屋から出ることは許さない。 わからないことがあれば同室の者に聞け。以上だ。」 一人の男が、割り込む隙もなくそう言い、彼を部屋に押し込んだ。 彼は抵抗せずに入った。どんなに頑張っても、ここから逃げ出すことは出来ないのだから。 彼を連れてきた男たちは部屋に鍵を掛けて、その場を去っていった。 彼が気付いた頃には、もう足音すら響いてはいなかった。  同室の者?誰かいんのか?
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