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「昔この護神木で首を吊った少女がいたそうだ…」
神主様は高くそびえたった樹木の肌に手を当て独り言のように語り始めた。
竹ぼうきを手にし、綺麗に敷き詰められた石畳みを掃いていた私は、手を休めそれを聞いていた。
暑い夏の日である。周りの樹々から聞こえて来るセミの鳴き声が少しうるさかった。
ここはお稲荷様が奉ってある稲荷神社。
周りは樹々に覆われ、夏になると虫捕りの少年などがやってくる。
地元の親交も根強い神社であった。
ここに大きな樹がある。樹木に関する知識がない為これがなんと言う樹なのかわからない。樹齢何百年であろうか。私が手を回しても全然届かない。
見る者を圧倒するこの樹はこの神社の護神木として立っていた。
「君には話したかな?神童と呼ばれた少女の話」
「いえ。初めて聞きます」
「そうか…」
神主様は天を仰いだ。
「以前君が本堂の奥で見つけた木箱あったじゃろ?ほれ埃の被った古い木箱」
「えぇ。覚えています。掃除をしていたら偶然出て来て。神主様に伺ったらそのままにしておけと言われましたので…」
「何か感じたかね?」
「正直…。邪気を感じました」
「あの木箱は誰が持ってもいい気分にはならん。ほとんどが悪寒を感じ投げ出してしまうじゃろ。霊感が全くない奴でもな…。君は人一倍霊感が強い。何が入ったいるか大方予想はついておるはずじゃ」
「悪霊ですか?」
「悪霊より質の悪い…怨霊じゃよ」
夏の暑さが感じなくなっている事は私自信気付いていなかった。
神主様の話をそれほど真剣に聞いていたからである。
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