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自分の声とは思えないようなものが、周りに散らばる。
身体に力が漲る。
でも、苦しい。
まただ。
「“エネルギー暴走確認、及び排除を開始します”」
機械的な声が聞こえた。
刹那。
意識が消えかかるのを認識できた。
まただ。
僕は、暴走した。
ふと、意識が鮮明になる。
「夢……か」
少し前のことを夢見ていたみたいだ。
かつて僕、桐島 護は、“masked trans school“、通称”MTS“の生徒だった。
その施設は、“masked system”の実験場だった。
いつ、どこで、この施設に連れ去られたのか。
そんな記憶はない。
おそらく生まれて間もない頃には、すでにこの施設に収容されていたと思う。
どういう基準で僕が選ばれたのか。
この施設はどこにあるのか。
すべてが謎だった。
ほとんど軟禁状態だったその施設で、僕とその他複数の生徒は“masked system”の実験を続けた。
ベルト状の装置を装着し、その状態で起動させる。
これが、変身。
“trans”だ。
変身後は身体及び頭部を特殊合金が覆い、身体能力を大幅に上昇させる。
でも僕は、うまく変身したことがなかった。
暴走。
その2文字が常に僕にはついて回った。
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