片翼

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 午前5時、彼はぼぅっとする意識、頬を伝う涙と共に目を覚ました。悲しい夢でも見たのだろう。そうゆう時は決まって、あまり思い出せないが、寂漠感だけが胸に在り続ける。  しばらくはもう一度眠気がやって来るのを待って、明け方の街のざわつきに耳を傾けていたが、喉が渇き舌がザラつく。少し冷えるので、布団から出るのはやや億劫だが彼は冷蔵庫へ向かう事にした。  薄ボンヤリと光る庫内を見渡し、ミネラルウォーターのボトルを取り出す。蓋をひねり、そのまま直に一口飲み下す。  ふと、ベッドの横、窓際に置かれたガラス細工が視界に入る、もう一口水分をとろうかと思った手がとまる。突然、先程の夢が鮮明に蘇り……涙がとめどなく溢れた。  そして一言、つぶやく。 「僕は…寂しいよ」
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