零・死亡

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  「というわけだ」 説教くらって小一時間。 「分かりました…」 としか言えねぇし…。 まぁ、別に未練もないし、いいか。 「んじゃ、やってもらう事がある」 「はぁい」 正座がきついです兄さん…。 せめて立たせて下さい。 俺の事はお構い無しに、青年は地面に色褪せた紙を置いた。 それにナイフ。 「これに血印しろ」 「……ワ、ワンモワタイムプリーズ?」 聞き間違い? 「…発音下手だな。 血印しろ。それで、冥界での仕事が決まる。 ったく、めんどくせぇ餓鬼だなぁ」 「餓鬼ってあんたと同じくらいでしょーが」 蓮の言葉に青年はふっと笑った。 少しムカつく。 「姿は蓮と同じだ。だが、年月ではお前の数倍年上なんだよ」 「はい?」 「まぁなんだ…俺は死神だ」 「…死神って、あの鎌を持って人間の魂狩っちゃう奴ですよね?」 「間違ってはない」 つまり、俺は今からこの人に、死者の国に連れて逝かれると…。 なんかヤバそう。 「……逃げていいですか?」 「ダメ」 ですよねぇ。 「あーもう。さっさと血印しろってぇの」 今ならおっさんの気持ちが分かる気がすると、青年が呟く。 「しろって言われても……」 紙を見る。 見たことのない字がずらーと並んでいる。 怪しいことこの上ない。
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