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根暗で人見知りな僕は、それだけ言うのが精一杯だった。
するとそのニット帽の人は、おかしそうに小さく笑い僕の隣に腰かける。
そしてゆっくりと唇を開いた。
「俺、……レイっての。一応三年。君は?」
「…えと、瑞樹…春日瑞樹(カスガ ミズキ)…二年です…」
眼鏡越しにおずおずと相手を見つめ、そう告げる。
レイ先輩は口元だけで笑い、軽く僕の頭を撫でた。
「宜しくな、瑞樹」
「こ、こちらこそ…」
ぺこりと頭を下げて、再び顔を上げる。
夕焼けに照らされたレイ先輩の顔を見つめ、僕はぎこちない微笑みを浮かべて見せた。
次の日の放課後から僕の隣には、いつもニット帽を被った先輩が座るようになっていた。
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