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「瑞樹っ」 レイ先輩の明るい声が聞こえて、本に向けていた顔をゆっくりと上げる。 唇に弧を描くレイ先輩を見付けて、僕は片手を上げておずおずと振って見せた。 するとレイ先輩も片手を上げてヒラヒラと手を振り返す。 何だか少し嬉しくなって、表情が緩みそうになった。 「今日は何読んでんの?」 「えと…これです…」 僕の隣の椅子に腰掛けながら、そうにこやかに話し掛けてくる。 相変わらずニット帽は被ったまま…と言うか僕はレイ先輩がニット帽を取った所を見た事がない。 図書室で会うときはいつも黒いニット帽を目深に被っていて、顔が確認出来ない様になっていた。
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