赤い扉の中

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赤い扉の中

中に入ると、まずは赤色の空間が目に入った。 どうやら扉の色は部屋の色を指すみたいだった。 次に入ってきた映像は……部屋の中央で宙づりになりながら啜り泣く少女の姿だった。 部屋の色が赤だったからだろうか。 暫くは女の子の状態が分からなかった。 だが、徐々に見えてきた。 その女の子には……手足が無かった。 手足を刃物か何かで切断されていた。 切り口からは血が流れている。 「助けて………助けて………」 少女は目から大粒の涙を流しながら弱々しく呟いていた。 俺はその状態を理解した瞬間に嘔吐した。 常人なら誰だってする普通の反応だ。 『気持ち悪い』ただそれだけが俺の頭の中を支配した。 少女の姿がまともに見れなくなった。 見ようとするたびに俺は吐く。 そうしていると、大きな足音がしてきた。 ふと目の前を見るとさっきの少女の姿が見えなくなる程背が高い大男がいた。 手には鉈を握っていた。 男はその鉈を振り上げて、少女がいる筈の所に力ずくで振り下ろした。 『グシャ』と肉が切れる鈍い音がした。 俺はその音が合図だったようにもう一度吐く。 次の瞬間、俺は首を掴まれた。 男は気持ち悪い笑みを浮かべている。 『殺らなきゃ殺られる』 俺の頭にはこれしか浮かばなかった。 俺は必至に銃を男に向けた。 「バン」と渇いた銃の音が聞こえてきた。 男の額の真中に穴が空いていた。 俺は男の手を開いた。 男は俺が手を開いた後に横に倒れた。 男の後ろから現れたのは真っ二つになった少女の姿だった。 切り口からは内蔵がとろりと出ていた。 俺はまた吐いた。もう胃液しか出てこない。 「どうして……」 少女の方から声がしてきた。 そんな筈はない……少女は殺されたのだ。あの鉈で真っ二つになった筈だった。 俺は目の前を見た。 やっぱりだった。 「どうして……助けて……くれ……なかった……の?」 真っ二つになりながらも少女は二つの口で喋っていた。 俺は錯乱して少女に銃を向けた。 「や…めて…」 もはや聞こえなかった。俺は出もしない叫び声を上げて少女を撃った。 5、6発撃った所で弾がきれた。 もう少女は喋らなかった。 俺は急いで部屋を出た。 もうこんな所には居られない。 夢なら…覚めてくれ……
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