~血溜~

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 「変装はなかなかだが、臭いはごまかされないぞ。  何人もの返り血を浴びたその鉄臭さはな。」  勘蔵は、ちら、と状況が理解できずに立ち尽くすテルに目でコンタクトをとる。  《大丈夫だ。》と。  「ああ、なるほど。臭いかあ。こりゃあ盲点だったな。  改良の余地があるなあ。」  英世は、自分の着ている服に手をかけた。  胸元からは、学生服が見えていた。  「いつから化けていた?殺人鬼さんよお。」  「さっきあんたが復讐だの抜かして、俺を殴ろうとしていた時だよ。  あの時、暗くて、声だけしか俺の居場所を知る手掛かりが無かったよね。」  「じゃあ、あの時に……。と言う事は――」テルはそれ以上言わなかった。  「そう、本物を殺したんだよ。勘蔵さん。」
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