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「私と会ったから、長生きできた‥?」
観鈴は、解らないという表情を見せた。
晴子は、続けた。
「あんな、猫ゆうのは足とか怪我したら、逃げられへんやろ。そしたら、狐やカラスに食べられたりいじめられたりするんや。海は頑張って生きようと、怪我した足引きずって観鈴と出会うまで生き延びたんやないか」
「うん‥」
「海は観鈴に会うて、怪我手当てしてもろて、ご飯食べさせてもろて、元気になったやないの。もしかしたら、死んでたかもしれんとこ、観鈴に助けてもろて、長生きできたやないか」
観鈴は海に目を落とし、頭を撫でた。
幾度撫でても、海はもう動くことも鳴くこともない。
「ねぇ‥」
「ん?」
観鈴は、海に目を落としたまま尋ねた。
それは、晴子に問い掛けたのか、海に問い掛けたかは定かではなかった。
「海は‥私と会えて幸せだったかなぁ‥」
「…あたりまえやないか…こんな幸せな猫、そうおらんわ…」
晴子も、海の頭を撫でた。
観鈴の目からは、また涙が溢れ出ていた。
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