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朝8時という時間に、電話を受けた俺は、それから1時間後、呼び出した当人の家に来ていた。
「悪かったな、朝早くから呼びつけて」
ちっとも悪いとは思っていない口調。
だが、この爺に逆らえる人間はいない。
俺を呼びつけた張本人。相沢宗一郎は、日本でもトップに位置する相沢財閥の現会長。
財界はもちろん、政界にも顔が利き、この爺の意見一つで、首相が決まるなんていうとんでもない噂まである人間だ。
「俺に何の用なんだ。くだらない用なら帰るぜ」
折角の休みを、こんな爺と顔を合わせる事で、無駄には過ごしたくない。
「そんな事を言っていいのか?悠貴に昨夜会ったのだろう」
悠貴の名前に、思わす反応してしまう。
「ああ。爺の計画通りな」
そう。昨夜の出来事はこの爺と、鵜飼の企みだった。
分かっていながら、その企みに便乗したのは、俺が悠貴と話をしたかったからだ。
まぁ、話だけで終わらなかったけどな。
「どうだ。アレは?」
「さあな。あんな短時間じゃ、本心は掴めないさ」
悠貴は、後継者としての教育は何一つ受けていない。
なのに、アイツの本心が何処にあるのかが分からない。
もしそれが、計算づくの演技なら、とてもじゃないが、俺の手にはおえない。
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