第一部 2

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   朝8時という時間に、電話を受けた俺は、それから1時間後、呼び出した当人の家に来ていた。  「悪かったな、朝早くから呼びつけて」  ちっとも悪いとは思っていない口調。  だが、この爺に逆らえる人間はいない。  俺を呼びつけた張本人。相沢宗一郎は、日本でもトップに位置する相沢財閥の現会長。  財界はもちろん、政界にも顔が利き、この爺の意見一つで、首相が決まるなんていうとんでもない噂まである人間だ。  「俺に何の用なんだ。くだらない用なら帰るぜ」  折角の休みを、こんな爺と顔を合わせる事で、無駄には過ごしたくない。  「そんな事を言っていいのか?悠貴に昨夜会ったのだろう」  悠貴の名前に、思わす反応してしまう。  「ああ。爺の計画通りな」 そう。昨夜の出来事はこの爺と、鵜飼の企みだった。  分かっていながら、その企みに便乗したのは、俺が悠貴と話をしたかったからだ。  まぁ、話だけで終わらなかったけどな。  「どうだ。アレは?」  「さあな。あんな短時間じゃ、本心は掴めないさ」  悠貴は、後継者としての教育は何一つ受けていない。  なのに、アイツの本心が何処にあるのかが分からない。  もしそれが、計算づくの演技なら、とてもじゃないが、俺の手にはおえない。
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