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俺の中には、悠貴を手に入れる為の策略がいくつも浮かんでいる。
「ただし、アレがお前に惚れたらの話だ」
その一言は、俺を打ちのめすのに充分な威力があった。
「爺、今更どういうつもりだ」
自分で思った以上に、声が低くなる。
「1年の間に、悠貴の気持ちがお前に向いたなら、アレはお前のモノだ」
1年以内か…。
楽勝だな。
「言っておくが、1年以内にそれができなければ、諦めてもらうからな」
爺に釘を刺されるまでもない。
しかし、一体何を企んでいるんだ。
本当に、本心が読めない爺だ。
「さてと、儂は悠貴を迎えに行ってくる。帰るまで好きにしていて構わないぞ」
「ああ。分かった」
俺の返事に満足したのか、爺はさっさと書斎から出て行った。
主のいなくなった部屋に用はない。
書斎を出て、庭へと足を向けた。
庭の隅。
屋敷に背を向けるように、そのベンチは置かれている。
誰が何の意味があって、設置したのかは知らない。
俺はそこに座り、過去へと思いを馳せた。
13年前。
俺はこのベンチに膝を抱えて座っている、悠貴を見つけた。
後ろ姿だったけど、その背中は何故か寂しそうに見えた。
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