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だけど、俺が声をかけるよりも早く、子供を探していたらしい大人が近寄っていた。
盗み聞きをするつもりなんてなかった。
ただ、その場所を離れるタイミングを失ってしまっただけ。
そして、会話の中で解ったことは、子供の名前が『ゆうき』だってことと、今夜から明日にかけて行われる葬儀に出席することだけ。
『ゆうき』の父親は、どうやら帰ってしまうらしい。
『ゆうき』を抱き上げると、屋敷へと向かって歩き出した。
その光景を見ていた俺と、『ゆうき』の視線が闇の中でぶつかった。
その瞬間から、俺は『ゆうき』に囚われていたんだ…。
今思えば、完全な初恋だ。
ベンチの背にもたれ、タバコを吸いながら、苦笑してしまう。
ただ悠貴だけを求めている、自分自身に対して。
あの日から、悠貴の存在は俺の中で、特別になった。
そして、悠貴以外の人間には、何一つ心が動かない事も知った。
悠貴の為だと思うから、面倒臭いだけの総帥もやれる。
俺の基準の中心には、悠貴の存在しかない。
だからこそ、何があっても手に入れるって決めたんだ。
それこそ、爺を敵に回す事になったとしてもだ。
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