第一部 1

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   その日、依頼された仕事の下見を兼ねて、ホテルの最上階にあるレストランに秘書と共に来ていた。  雰囲気は良いけど、レイアウトが悪いのか、妙に圧迫感があり、狭く感じる。  「何か狭いですね」  「そうだな」  秘書の言葉に相槌を返し、店内を見渡す。  金曜日のせいか、夕方6時という早いじかんなのにもかかわらず、席はほぼ満席に近い。  その中で、俺は気になる二人連れを見つけた。  そのうちの一人に見覚えがあったからだ。  だが、そいつは俺に気付かず、連れと楽しそうに談笑している。  一人ならばまだしも、相手がいるのなら、野暮な事をする気はない。  案内された席に落ち着き、もう一度店内を見渡す。  やはり、最初に感じた通り、狭い。  理由はすぐに判明した。  隣との席の間隔が、開いていないんだ。  多分、客数を増やす為に、席を増やしたせいだな。  大体の目処はついた。  後は料理の味が問題だが、あいつが来ているのなら、大丈夫だろう。  「社長、鵜飼さんがいらっしゃいますよ」  「ああ、知っている。連れがいるから、挨拶は控えろよ」  鵜飼は、俺の会社の取引相手だ。  「判りました」  そう言って秘書は、二人から視線を外した。
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