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と言うよりも、興味が持てないと言うのが正しいか…。
はっきり言って、俺は俺以外の存在など、何とも思わない。
和実も東堂も、高校時代からの友人だ。
だが学生時代と比較すれば、秘書をしている和実とは違い、東堂と会うことはほとんどない。
こうして和実から聞くぐらいで、聞いたところで何も思わない。
和実にしても毎日顔を合わすが、ある日突然会社に来なくなったとしても、気にも止めないだろう。
会話は必然があるからするだけ。
俺はそういう人間になってしまった。
その変化に、和実は気付いているだろう。
だからといって、和実の態度が変わる事がない。それが、俺にとっての救いだ。
望んで変わったわけではない。
変わらなければ、俺は今の立場を得ることができなかったんだ。
そのために、不要なモノを切り捨てただけ…。
それでも時々、昔の俺に戻ることがある。
さっきみたいに…。
「社長、そろそろ行きましょうか?」
和実の声が、俺を現実に引き戻す。
「そうだな」
カップに残っていたコーヒーを飲み干し、席を立つ。
ちょうど鵜飼が、会計を済ませたところだった。
鵜飼の連れの顔は、死角になっていて、確認ができない。
ダークブルーのスーツが、色の白い肌を際立たせている。
線が細く、華奢な身体。
後ろ姿だけでは、男か女か見分けがつかない。
じっと見つめていた、俺の視線に気付いたわけではないだろうが、ソイツが振り返る。
「ゆう…き…?」
ほんの一瞬の出来事。
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