第一部 1

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   悠貴が「うん」と言うまで、腕を離すつもりはない。  根負けしたのは悠貴の方だった。  俺が望む通りの返事が返ってくる。  内心で樮笑(ほくそえ)み、悠貴の腕を解放する。  そのかわり、さりげなく肩に手を回した。  その肩がぴくりと震える。  素直な反応が嬉しいと思ってしまう。  こんなにも感情が動く自分を珍しく思う。  だが、それは相手が悠貴だからだ。  俺が唯一執着し、欲しいと望んだ存在。  だから、決して逃しはしない。  必ず手に入れてみせる。  例え誰を敵に廻しても…。
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