第一部 1

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   鵜飼との約束通り10時過ぎには、悠貴を家の近くまで送ってきた。  車を停止させ、後部座席に置いてあった紙袋を、悠貴に手渡す。  だが悠貴は中々、受け取ろうとはしない。  そんな悠貴の腕の中に、無理矢理押しつけ、そのまま唇を奪った。  軽く触れるだけのキス。  唇が離れた瞬間、乾いた音とともに、左頬に激痛がはしった。  平手打ちをされたと気が付いたのは、助手席のドアが閉まるのと、ほぼ同時。  フロントガラス越しに、悠貴が家に駆け込む姿が見えた。  玄関のドアが閉まるのを確認して、車を発進させる。  俺の機嫌はこれ以上にないほど良かった。  悠貴の中に、少なくとも俺という存在を刻みつける事ができたんだからな。
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