楽しかった日々

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「でね、逃げたりするのは良いんだけど、その後が大変なのよ」 「それが『ブラックさな』?」 ようやく我にかえった僕は、亜沙子に聞いた 「そう、逃げた後数十分間は、人が変わった様になっちゃうの」 「と言うと?」 「見ればわかるわよ。ほら、帰ってきた。」 亜沙子がリビングの入り口に指を指し、そこから作苗が入って来た ありえない程の満面の笑みで 「あはははは!ごめんごめん♪取り乱しちゃったね~♪あはははは」 「ほら……ね?わかったでしょ?」 「う、うん」 「お、おう」 僕達は、同時に返事をした ゆーかはあまりに突然すぎて、ついて行けないようだった 「あたしさ~、メロンって大嫌いなんだよね~↓↓なんでかは知らないんだけどさ~。ごめんね~♪」 「い、いや、こっちこそごめん」 どうやら、ブラックさなの特徴は、語尾に変な記号や、『~』がつく事らしかった 「この変な明るさに、裏がありそうだから『ブラック』なんだ。こうなったら、私でも敵わないのよ」 亜沙子が小声でそう言った 「納得」 「へ、へぇー」 「ん?なになに?なんの話?」 「え?い、いや、なんでもないわよ?」 『ブラックさな』は地獄耳らしい 「ふーん……ま、いいや♪でさ、なにして遊ぶ~?」 その声ではっとしたゆーかが 「わ、私、これをもってきたよ」 と言って、腰に提げていたポシェットからトランプとウノを取り出した 「お!でか……」 亜沙子がゆーかに絡もうとしたが、それよりも速くブラックさなが飛び付いた 「でかした!ゆーかちゃん!!よし、今日はこれで遊ぼう♪」 ブラックさながゆーかの頭を撫で、テーブルに出されたトランプとウノを両手に持ち、頭上に掲げた それと同時に、僕の中の『作苗像』が音をたてて崩れさった それは浩司も同じのようだった 「俺、作苗のイメージが180度変わった」 「うん。わかる気がする」 ふと、気付くと、亜沙子の姿が見えない 少し探すと、亜沙子は部屋の隅で丸くなって泣いていた 「私の立場が……私の立場がぁ~」 いつも冷静な作苗が部屋の真ん中でトランプと、ウノを頭上に掲げてて いつも明るい亜沙子は自分の立場を取られて部屋の隅ですねてる この地獄画図に僕と、ゆーかと、浩司はただただ立ち尽くすだけだった
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