歌が聞こえる三話

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一歩一歩階段を上がる、昔何かの本に出てきた言葉、『生きるということは絶望することだ』後にもう少し続いた気がするが大切なのはこの部分だ、私はもう絶望した、一生分の絶望は味わった。 この文が真実なら、普通の人はゆっくりと絶望して、ゆっくりと生きなくなっていく。 私は急速に絶望して急速に生きなくなっていくんだ。   屋上まで後10段程の所に来た時だ。これは…………歌? 私の歌声自慢をするわけではないがしかしこの歌声は酷い。 調子っぱずれも大概にしたほうが良い。 あぁっ、もう音外しすぎ。リズムすら一定じゃないし、そもそもつまりつまりだし。 でも、楽しそうだな。 私は階段を上がる速度を高める。といっても大差はなかっただろうが。 最後の階段を登りきり屋上へと出る扉を開ける。 心地良い陽射しが私に降り注ぐ、春も終りに近付いたこの季節私の最も好きな時だ。 そんな中で下手くそな歌を歌っている奴。奴。奴。 あれ?いない、歌も丁度扉を開けた時に止まってしまっているし。 幻聴?まぁ良いか、目的を果たすとしよ。 ふらふらとまた歩き出す。手摺も無いので今度はホントにふらふらしている。 「あにしにきたの?」
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