歌が聞こえる三話

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後ろから聞こえた声は舌っ足らずでハッキリとは聞こえずらい。しかし、その声はさっきの歌の声と確かに同じ声だった。 後ろを振り返ると一人の男が今私が出てきた扉の上にいた。 屋上の更に上に。 「がめんね、急に話しかけたって」 喋る事になれていない子どものような声。 でも何故か幼さは感じさせない声。 「いえ、別に良いわ、気にしないで」 と。言ったつもりだった。しかし喉から漏れるのは虚しい空気の音。忘れていた、私はもう喋れないんだ。 だからここに来たんだ。 「されなら良かっは。ここに来るしとは珍しいからさ」 その男、いや少年と言っても良いくらいだろう、私より少し低いくらいだろうか。は、事も無げに言葉を返してきた。 それが当たり前のように。 日常だと言わんばかりに。 確かに私の喉から出たのは言葉では無かったはずだ。何故?テレパシー? 私はもう一度試してみることにした。 「なら何故貴方はここにいるの?」 やはり喉から漏れるのは声ではない。 私は口をパクパクさせているだけだ。
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