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後ろから聞こえた声は舌っ足らずでハッキリとは聞こえずらい。しかし、その声はさっきの歌の声と確かに同じ声だった。
後ろを振り返ると一人の男が今私が出てきた扉の上にいた。
屋上の更に上に。
「がめんね、急に話しかけたって」
喋る事になれていない子どものような声。
でも何故か幼さは感じさせない声。
「いえ、別に良いわ、気にしないで」
と。言ったつもりだった。しかし喉から漏れるのは虚しい空気の音。忘れていた、私はもう喋れないんだ。
だからここに来たんだ。
「されなら良かっは。ここに来るしとは珍しいからさ」
その男、いや少年と言っても良いくらいだろう、私より少し低いくらいだろうか。は、事も無げに言葉を返してきた。
それが当たり前のように。
日常だと言わんばかりに。
確かに私の喉から出たのは言葉では無かったはずだ。何故?テレパシー?
私はもう一度試してみることにした。
「なら何故貴方はここにいるの?」
やはり喉から漏れるのは声ではない。
私は口をパクパクさせているだけだ。
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