歌が聞こえる三話

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彼はまだ来てない、というか約束したわけでもないし彼が今日来ない事だって有り得る。 私は昨日彼がいた場所に寝転がり彼を待つ。 それは少し愉快だった、暖かい陽射しの中でコンクリートのひんやりとした感触が気持良い。 私の瞼が段々と重く、段々と…………。     夢を見た。 私は寝てしまったようだ。 それはとてもリアルな夢で。 ともすれば夢とは気付けない程の。 私は普通に学校に通い。 友達とお喋りをしていた。 ただの日常。 もしかしたら現実かもと錯覚するくらい。 もしかしたら現実かもと期待するくらい。 でもそれは現実ではなくて。 ただの夢に過ぎず。 私は現実に引き戻される。   何だかちぐはぐな音で目を覚ました。 目を開けると青かった空が赤くなっていた。 ずいぶん寝てたんだな、彼は来なかったのかな? と、彼がいた。こちらに背を向けて縁に腰かけて夕日を見ていた。そして私の目を覚ましたちぐはぐな歌を歌っていた。 相変わらず下手くそでしょうがない。 彼はこちらが起きた事には何も気付かずにジッと空や夕日やそれに照らされる街を見ていた。 「ねぇ」 声と言っても音のない声で話し掛ける。
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