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歌が聞こえる。
また歌が聞こえる。ずっと歌が聞こえる。更に歌が聞こえる。毎夜歌が聞こえる。今も聞こえる。
「うっさい!!」
俺は壁に拳を叩きつけて叫ぶ。
「毎日毎日歌ってんじゃない!!こんなアパートボロいんだから全部筒抜けるんだよ!」
そうなのだ、寝る前になると毎日毎日欠かさずに響いてくる歌声、最初の頃はまだ我慢出来た。しかしこうも続けば我慢も限界だ。
「何だ?アレか?俺の睡眠を邪魔したいだけなのか?そりゃまぁ歌は上手いけどよ、カラオケ行ってこいカラオケ。」
少し間をおいてからオドオドした女性の声が聞こえてきた。
「あ、あの、すみません、でも、私、その、カラオケとか、行ったことないもので」
何かトンチンカンなことを言う人だというのが最初の感想だ。
「はぁ。まぁ俺は今から寝るんで静かにしてくださいね」
何故か下手に出る俺。
「えぇっ!でも私は歌いたいんです」
「知るか!!こっちは眠いんだ」
「しゅん」
「いや、漫画じゃねぇから、自分でしゅんとか言っても落ち込んだ空気出ないから」
その日はとりあえず歌は止んだのだが、その日から俺と奇妙な隣人との奇妙な関係が始まることとなった。
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