歌が聞こえる二話

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歌が聞こえる。 また歌が聞こえる。ずっと歌が聞こえる。更に歌が聞こえる。毎夜歌が聞こえる。今も聞こえる。   「うっさい!!」 俺は壁に拳を叩きつけて叫ぶ。 「毎日毎日歌ってんじゃない!!こんなアパートボロいんだから全部筒抜けるんだよ!」 そうなのだ、寝る前になると毎日毎日欠かさずに響いてくる歌声、最初の頃はまだ我慢出来た。しかしこうも続けば我慢も限界だ。 「何だ?アレか?俺の睡眠を邪魔したいだけなのか?そりゃまぁ歌は上手いけどよ、カラオケ行ってこいカラオケ。」 少し間をおいてからオドオドした女性の声が聞こえてきた。 「あ、あの、すみません、でも、私、その、カラオケとか、行ったことないもので」 何かトンチンカンなことを言う人だというのが最初の感想だ。 「はぁ。まぁ俺は今から寝るんで静かにしてくださいね」 何故か下手に出る俺。 「えぇっ!でも私は歌いたいんです」 「知るか!!こっちは眠いんだ」 「しゅん」 「いや、漫画じゃねぇから、自分でしゅんとか言っても落ち込んだ空気出ないから」 その日はとりあえず歌は止んだのだが、その日から俺と奇妙な隣人との奇妙な関係が始まることとなった。  
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