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「だって私は有名だから、名前言ったら分かっちゃうわ」
「分かっちゃう?何がです?こんなアパートに住んでるんなら芸能人ってわけでもないでしょう」
「ふふっ、じゃあよしましょ、貴方は貴方。私は私、それで良いわよね」
夜は耽る、何が起きても、何もなくても時は進む。
「もう一年かぁ、早いよね、特にこの一ヶ月は早かったわ」
「…………?何の話?」
「つまりはね、お別れってことなの」
「急だね」
別にいきなりだとは思ったが相手は顔も知らない隣人だ、少し悲しくもあったが呼びとめれるものでもない。
ただ、受け入れるだけ。
「それにしても一年ってどういうことですか?期限?」
「そ、期限。神様がね、許してくれたんだ、一年だけってね」
「神様?一体どういうことなの?何の話か分からないんだけど。ねぇ、貴方は一体誰なんですか?」
「私は。私の名前は―――――。」
「―――――?」
「そう、だからね、バイバイ」
それだけ残して彼女からの反応はなくなった。
彼女の名前。どこかで聞いたような。どこかで。今はまだ思い出せないらしい。
俺は眠りについた。
いつも不思議な人だったけど、神様とか言い出す不思議さではなかったんだけどな。
どうしたんだろう。
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