歌が聞こえる二話

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「思い出せん!」 ガバッと布団から起きた俺はひとりごちた。「てか、実は聞いた事なんかないんじゃないか?だって思い出せねえし」 目を開けて布団をトバンと押し入れにしまい顔と歯を磨き。外に出る。 「あんたは一体だれだ!?」 隣の部屋の扉を叩く。ここにはインターフォンなんて洒落た物はついていない。 出てこない、まだ早朝で出掛けるには早すぎる。それに昨日までは確かに。 「こらこら、まだ早朝だ、あまり煩くしちゃいかんよ」 「あっ、大家さん、おはようございます」 「うむ、おはよう」 「この部屋の女の人っていますよね?まだ引っ越したりとか」 「ん?そこは暫く誰も使ってないはずだが」 「へ?いやでも、しかし、確かにいましたよ」 俺は大家に頼み込んでそこを開けてもらった。話の分かる大家で良かった。 そこにあったのは、 いや、何もなかった。今いる部屋も俺のいる部屋も全く同じ構造だ、引っ越してきた時の俺の部屋と何も変わらない。押し入れに死体が詰まってるということもない。ただの部屋だ。
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