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夜、けたたましい電話のベルの音が、部屋に鳴り響く。
時間は既に23時になっていた。
はい…筧でございます。
貴男ですか!娘に手を出した輩は!
相手の声は、女性。しかもかなり立腹されている。私には、全く知らない声だ…。
どちら様でしょうか?
貴男!ふざけるのもいい加減にしてちょうだい!
電話口の女性が、何故立腹しているのか?また、誰なのか?を考え、黙っていると…
もうこれ以上、娘の「櫻」に近づかないでちょうだい!
貴男!聞いてるの!
娘に何かあったら、間違いなく、警察に通報しますからね!
この女性は、彼女の母親か!?
しかし、何故こうも立腹しているのかを、私には理解できない。
電話口の女性は、私の話を聞く事なく、一方的に電話を切ってしまった。
どういう事何だろう…。彼女の周りで、何が起きたと言うのだろうか?
翌日、7月11日
昨日の電話を気にかける事もなく、店の閉店時刻が迫っていた。
漆黒の闇が、丘の桜をのみ込んだ頃に閉店するのが、この店の特徴だ。
そろそろか…
私が、店先の木戸に近づいた時…
筧さん
と、声を掛けられる。
そこには、尾崎教授が立っていた。
今晩は。こんな時間に珍しいですね、お急ぎですか?
い、いや…
僕の生徒が、お邪魔してませんか?
生徒?
この間、僕の代わりに来た、女子生徒ですよ…
いえ、お見えになってませんが、どうかなさったのですか?
最近、講義を休みがちになっていて、ここに来ていないかと思いましてね…
そうなんですか…
1生徒さんを、そこまで気にかけておられるとは…
いや…彼女は、僕の姪に当たる子、つまり身内なんだよ。
(知ってる。知ってはいるが、あえて初めて聞いた事にする。)
そうだったんですか…
もし、彼女が来たら、教授に連絡しましょうか?
筧さん、頼めるかい?
今日は、もう閉店ですので、もし後日来られたなら、連絡しましょう。
教授の頼みを聞き終わると、教授は帰っていった。
やはり、彼女に何かあったようだ。
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