1986年7月10日 殺意

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夜、けたたましい電話のベルの音が、部屋に鳴り響く。 時間は既に23時になっていた。 はい…筧でございます。 貴男ですか!娘に手を出した輩は! 相手の声は、女性。しかもかなり立腹されている。私には、全く知らない声だ…。 どちら様でしょうか? 貴男!ふざけるのもいい加減にしてちょうだい! 電話口の女性が、何故立腹しているのか?また、誰なのか?を考え、黙っていると… もうこれ以上、娘の「櫻」に近づかないでちょうだい! 貴男!聞いてるの! 娘に何かあったら、間違いなく、警察に通報しますからね! この女性は、彼女の母親か!? しかし、何故こうも立腹しているのかを、私には理解できない。 電話口の女性は、私の話を聞く事なく、一方的に電話を切ってしまった。 どういう事何だろう…。彼女の周りで、何が起きたと言うのだろうか? 翌日、7月11日 昨日の電話を気にかける事もなく、店の閉店時刻が迫っていた。 漆黒の闇が、丘の桜をのみ込んだ頃に閉店するのが、この店の特徴だ。 そろそろか… 私が、店先の木戸に近づいた時… 筧さん と、声を掛けられる。 そこには、尾崎教授が立っていた。 今晩は。こんな時間に珍しいですね、お急ぎですか? い、いや… 僕の生徒が、お邪魔してませんか? 生徒? この間、僕の代わりに来た、女子生徒ですよ… いえ、お見えになってませんが、どうかなさったのですか? 最近、講義を休みがちになっていて、ここに来ていないかと思いましてね… そうなんですか… 1生徒さんを、そこまで気にかけておられるとは… いや…彼女は、僕の姪に当たる子、つまり身内なんだよ。 (知ってる。知ってはいるが、あえて初めて聞いた事にする。) そうだったんですか… もし、彼女が来たら、教授に連絡しましょうか? 筧さん、頼めるかい? 今日は、もう閉店ですので、もし後日来られたなら、連絡しましょう。 教授の頼みを聞き終わると、教授は帰っていった。 やはり、彼女に何かあったようだ。
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