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その時
客の相手をしていた人が
カウンターの、僕の目の前に座った。
思わず息をのむ。
「またお茶引きだわ」
そう言って
目の前の人は深いため息をついた。
ママの様に背が高いだけで普通の女性に見えたので
ちょっとホッとして
酒作りを再開した。
「あっ
お茶引きっていうのはね
指名客が一人もいない事をい うの」
――慰めてほしいのか。
……愚痴りたいのか。
僕は彼が何も言わないので、無言で酒を作り続ける。
そうしているとしびれを切らした様に、目の前の人は口を開いた。
「慰めてもくれないんだね。
冷たいなぁ」
――彼からの応答がまだない。
「ま、いっけど」
その一言の後
僕は新しいお酒を作ってみた。
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