†1st story†

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(ここ、あんま客入って来ねぇ な。  ん~……やっぱそんなもんだ よな。男だし)   彼が急に復活したので びっくりしてつい、そのままその言葉を 声に出してしまった。     意外にもその人は勢い良く食いついてきた。     「そうなの!  私が入るまではとても人気の あったお店なのに」   “ん~……”から後は頭の中で削除したらしい。     「だから客が減ったのは私のせ いだって、  先輩方に店をでてけって  責めたてらてるんだ。    ママも、前まではかばって くれたのに  前バーテンダーの方が辞めて からは……」     その人は 最初、ため息をついた時と同じく 思いつめた顔をして言う。     図体はでかいが その姿は女性にしか 見えなかった。       一呼吸おいて 僕は新しく作ってみた酒を ‘彼女’の前に置いた。       「これ、私に?」     目をパチクリさせながら彼女は質問してきた。     僕は彼の言葉を待つ。           (……君のお酒だよ)
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