†1st story†

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すでにそのグラスがカラになった頃 また、その人は話し掛けてきた。     「あなた、旅人よね?  服で分かる」     オーダーが入らなかったので 僕はカウンターの隅で少しうつむき、休んでいたが 顔を上げる。     「まだ子供なのに、どうして旅 をしているの?」   彼は全く反応しない。 それでも彼女は続けた。     「…何か探してるの?」     僕はそれに反応し 身を起こす。   「この町のある情報がほしいん だ!  ……答えてくれないか?」   相当必死そうな彼の言葉がその後から響く。     願いが通じたらしく 彼女は   「一つならいいよ」   と返してくれた。     「『箱』を知らないか?!」   彼は興奮してしまったようだ。 息が荒く聞き取りにくい。    やっと二つ目の 彼にとって大切な『箱』が 見つかりそうなのだから、分からなくもないが。    僕は彼の言葉を言いながら もう一度、彼女の前に立った。     しかし、当の彼女は はぁ? という顔をしている。    彼は気にせず補足した。     「この町に 『どんな事しても壊れない箱』  があるって聞いたんだけど、  ……知ってる?」        本当はその箱には他にも特徴がある。       人を不幸にする     そんな、呪いじみた《魔法》がかけられているという事。   恐らく 色々な人の手に渡らせるためだろう。             彼・クロノスに見つけられないように………
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