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「………………」
少年の手には
僕の財布が握られていた。
「あー……
見逃してっ
見逃しやがれ!
どうせあんた旅人だから
大して金持ってねぇだろ?!」
――――――ムカ
必死に逃げようと暴れている少年のひたいを
軽く叩いて、
僕は一息ついた。
(どうすんだ?)
一応彼が聞いてきた。
―警察に連れて行く。
(ちょ~っとやり過ぎな気す っけど
仕方ねぇか)
彼は少々、少年に同情しながらも
セリフを言う。
「警察に行くよ」
それを聞き取った少年はさらにジタバタして
反論した。
「そんな!
ひでぇよ!
俺は一日三食食うのが精一杯 の生活してんだぞ?!
俺が捕まったら妹と弟は食う モノなくて死んじまうっ!」
僕はその話を嘘だと思ったが
彼は何か思う所があったのか
尋ねる。
「お前、親は?」
どきっとした。
声に出すのが少し遅れる。
僕に向けての一言かと思ったのだ。
そんなはずはないのに……
なぜなら、初めて彼が入り込んできた時に
その質問はされているのだから。
僕は首を振るだけで答えられなかったけれど。
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