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ガッカリしてその場を離れようとすると
その話を聞いていたマスターが
耳打ちしてくれた。
「この町で一回でもいいから働 いてみな。
もしかすると教えてくれるか もしれないぞ」
――そこで
また“彼”の独り言が聞こえてくる。
(丁度金なくなってきた所だし
明日役所で仕事貰おー。
てか、独り言じゃねーし!)
とりあえず、僕は彼を無視し
酒場を出た。
あの初めて『箱』を開けた夜から、僕の中に転がり込み
今、僕の中だけでこの世界に存在し、活動する事ができる
“彼”は
《クロノス》という。
以前、『箱』が堕ちてきた夜より前には
彼の身体は存在していたらしいのだが
“ある事情”で
精神だけの存在となってしまった。
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